**書 籍 2** (著者名・アイウエオ順)

 

 

 

**小説ほか**

 

 

「雪と雲の歌」 市川信夫(著) 

 ポプラ社/1975年

著者の父は、地元・新潟で戦前から瞽女の研究に従事したことで知られる民俗学者の市川信次。著者自身も幼い頃から高田瞽女の杉本キクエらと親しく付き合い、盲学校・養護学校の教諭として障害者教育に携わるかたわら、童話作家としても活動してきた。本書は明治30年代に生まれた盲目の少女・ユキエが瞽女に弟子入りし、周囲に温かく見守られながら一人前に成長していく過程を描いた物語で、杉本キクエをモデルにしているものと思われる。児童向けに書かれているため読みやすく、高田瞽女の終焉期を背景としているにもかかわらず、清々しい読後感がある。瞽女たちのくらしや、盲人に対する周囲の振る舞い、主人公が杖の使い方や道を覚える場面など、要所に著者の経験が生かされ血の通った表現となっている。

 

 

「ふみ子の海」 市川信夫(著) 

 理論社/2006年

昭和初期、新潟の寒村に生まれた聡明な少女ふみ子は3歳で光を失い、盲学校入学の夢をもちながらも鍼按師へ弟子入りし自立の道を歩むことになる。戦時下の日本を背景に、ふみ子の成長を描いた爽やかな長編青春物語。1991年度児童福祉文化賞受賞作。1989年に児童向け小説として上下巻で出版されたが、2007年秋に映画公開が決定し新装版として再出版された。盲学校教諭として視覚障害者教育に尽力した実在の女性・粟津キヨをモデルにしている。瞽女は物語前半の瞽女宿での演奏場面などで度々登場。当時の盲人の立場や生活が詳細に描かれている。

 

「瞽女の啼く家」 岩井志麻子(著) 

 集英社/2005年

明治期の岡山の瞽女屋敷が舞台。美しい女主人すわ子、行く先々に福をもたらすイク、霊感を持つお芳。光を失った代償のように、それぞれに特出した何かを与えられた瞽女たち。やがて、すわ子がみる「牛女」の不吉な夢に取り込まれるかのように、屋敷全体が得体の知れない影に覆われていく。人を殺した者の家に生まれると言う、頭は牛、身体は女の怪物「牛女」の伝説と瞽女をからめ、ホラーの旗手である著者一流の怪談が繰り広げられる。イクは、どことなく実在した瞽女の中村カツを思わせるキャラクター。中篇ということもあり、テンポの速い展開で一気に読める。

 

「野仏の瞽女」 岩森道子(著) 

 近代文藝社/1984年

盲目の母と二人暮らしのカナ子は、濃密な母との関係に疲れ、死を決意。命を絶つために入った山の中で、人里を離れて暮らす不思議な親子に出会う。主人公の再生を描いた短編で、九州を中心に活動する著者の小説集の中の一編。瞽女を思わせる石仏が盲目の母の分身のような存在として登場する。

 

「瞽女んぼが死んだ」 金森敦子(著) 

 角川書店/平成2年

短編時代小説集の中の一編。赤い紐で互いの身体を縛ったまま、二人の瞽女が水死した。自身も盲目の幼い娘を持つ名主の市兵衛は、水死の理由を調べるうちに瞽女の哀しい宿命に行き当たる。著者は近世の旅行史をわかりやすく紹介した著作が多数あり、本作が初めての小説集。実際にあった瞽女の溺死事件がモデルになっている。

 

「瞽女歩く」 国見修二(著) 

 玲風書房/2009年

5章、100ページからなる詩集で、全編が瞽女をテーマにした詩となっている。著者は新潟県生まれ、在住の詩人であり、瞽女の住んだ高田にもゆかりの深い人物。瞽女の歩く新潟特有の畑や雪道の景色が彼女たちの心情を表すように気高く美しく表現されている。画家・斎藤真一の高田瞽女を描いた絵画に着想を得たそうだが、そのためか高田瞽女をモデルとしているように感じられる内容が多い。表紙、挿画には斎藤真一の油彩画・水彩画等を使用している。

 

「越後ゴゼ」 仙波いく(著) 

 講談社出版サービスセンター/1998年

瞽女を主人公にしたミステリー風の小説。北越の貧しい寒村の川から、若い瞽女と身元不明の男の遺体が揚がった。はたして心中なのか、殺人なのか。謎を解き明かしながら、明治から昭和初期の北越地方に生きる瞽女・南雲トラと周囲の瞽女、彼女たちを取り巻く村人の暮らしを描いていく。明治生まれ、新潟出身の著者の記憶が生かされているようで、登場する人々の新潟弁の会話が生き生きとしていて秀逸。

  

「瞽女唄がきこえる 中沢武志戯曲集」 中沢武志(著) 

 門土社総合出版/平成2年

4編からなる短編戯曲集。新潟に生まれ育ち、高校教諭をしながら学校演劇にたずさわる著者の、地元新潟をテーマに書いた作品を収録している。瞽女を廃業し、静かに暮らす杉山ハルの元に、二人の女子高生が話を聞かせてほしいとやってくる。問われるままに哀しい運命をたどった瞽女の話しをするうち、ハルの秘密が明らかに。瞽女式目が合唱として挿入されるなど、印象的に使われている。

 

「土」 長塚節(著) 

 岩波文庫/1970年

明治43年6月から11月まで東京朝日新聞に掲載された長編小説で、貧しい農村の暮らしを描いた。瞽女は物語の中盤で数ページ登場し、来訪の様子が描かれている。正岡子規の影響を受け文学活動を行いながら生地である茨城の農村に住み続け農業を営んでいた著者の表現は非常に写実的で、当時の瞽女や村人の様子が克明に筆写されている。

 

「山妣」 坂東眞砂子(著) 

 新潮社/1996年

物語は明治のはじめ、越後の雪深い山村の大屋敷に、東京の芸人一座から座長の扇水と弟子の美しい少年・涼之助が訪ねてくるところから始まる。逗留するうち、涼之助は跡取りである鍵蔵の妻・てると密通するようになる。鍵蔵に追われ山に逃げた涼之助は、人里を離れ洞窟でくらす山姥と出会い、驚くべき秘密を知ることに。物語の後半では、主要人物のほとんどが陰惨な形で殺されてしまう。情交に溺れたものには天罰が下るかのようだ。しかし、どんな秘密も、死も、生も、すべて巨大な「山」が飲みこんでいく。著者の重厚な筆致が、山の一部となった山姥から生み出された子供と里に生きる人々との対比を見事に描きだしている。瞽女の少女・琴は婚姻を禁じる瞽女の掟ゆえに、唯一清らかな存在として描かれているが、その琴も情に目覚めたことで残酷な運命に巻き込まれていく。著者は本書で第116第回直木賞を受賞。

 

「瞽女姫お美代」 三角寛(原作)・真木村昆(画) 

 曙出版/昭和45年

山窩研究家で作家の三角寛が原作を担当した漫画。「山窩文学漫画全集」とあるが、第2集までしか発売されていない。内容は山窩の親分である新助と美しい瞽女・お美代の愛憎に満ちた悲恋物語で、「瞽女姫」となっているが、お美代は目明きの瞽女である母と山窩の父の間に生まれた娘であり「姫」ではない。また、お美代自身も目明きでありながら瞽女となり、流浪生活をしながら家族を養っているという設定。山窩の掟や新助との恋愛が物語の中心で、三味線を弾く場面も一度も登場せず、お美代が瞽女であることは物語の風味付けでしかない。しかし、三角の著作には賛否両論あるものの、瞽女をヒロインにした漫画が出版されたのは「三角寛の山窩文学」という看板の力に他ならないだろう。そうした背景を鑑みれば貴重な出版物と言える。

 

 

「はなれ瞽女おりん」 水上勉(著) 

 新潮社/昭和50年

水上勉の代表作のひとつであると同時に、瞽女文学の金字塔的作品。男と交わり、はなれ瞽女に落とされたおりんは、脱走兵・岩淵平太郎と出会い、兄弟のような肉親の情で結ばれるようになる。大正時代なかば、越中米騒動やシベリヤ出兵を背景に、時代に翻弄される人間の姿を、目の見えぬ瞽女の心眼を通して描いた。出版から2年後には篠田正浩監督、岩下志麻主演で東宝で映画化され、昭和55年には有馬稲子主演で舞台化、現在まで600回以上の公演を数えている。書籍も版を重ねており、斎藤真一の著作と並んで瞽女という存在を広く世間に知らしめる重要な契機となった。

 

「越後瞽女唄冬の旅」 村山富士子(著) 

 筑摩書房/1977年

新潟生まれの著者による中篇小説集の中の一作で第12回太宰治賞受賞作。重厚かつ品のある文章が美しい。ある瞽女一家の一年を通して、彼女たちそれぞれの人生が織物の糸のように交差し、色鮮やかに描き出される。一家衰退の予感の中、主人公のみわが盲目であることの閉塞感に苦しみながらも唄に生きる喜びを見出す場面は感動的で、瞽女として生きることの苦しみと希望が切々と胸にせまってくる。淡々と流れていく物語のなかに、登場人物たちの表情や四季の風景を叙情豊かに描きこんだ瞽女文学の傑作。

 

「瞽女歌殺法」 森幸太郎(原作)・小山春夫(画)

 日本文芸社/昭和49年

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「蓬莱橋にて」 諸田玲子(著) 

 祥伝社文庫/平成16年

8編からなる短編時代小説集。その中の一編である「瞽女の顔」は、瞽女を装って油断させ旅人の懐をねらうという、二つの顔を持つお菊の皮肉な仇討ち物語。東海道の宿場町・沼津の瞽女屋敷が舞台の一つとなるなど、周到な取材ぶりが光る。

 

「セイタカ童子」 若菜邦彦(著)・前田志津香(絵)

 新風舎/2007年

仏教の教えを児童向けにわかりやすい描いた短編童話集。「セイタカ童子」、「月の山」、「瞽女さんの石」の3篇が収録されている。「瞽女さんの石」は、越後の国境の街道に頭を出した大きな石が村の人々や街道を通る旅人から邪魔者扱いされているが、盲目の瞽女の少女にとってはその邪魔な石こそが道しるべとなる、というストーリー。切絵による挿絵もかわいらしく、楽しく読める。

 

 

 

 

 

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