[平成娘巡礼記]

47:アメリカ人女性2人組


般若心経を唱えるアメリカン遍路
 とうとう、うわさのアメリカン遍路に出会った!

 野宿青年から“2人組のアメリカ人女性遍路が歩いている”と聞いたのは、まだ高知にいたころ。あんなうわさはウソだと思っていたが、本当だったのだ。そのふたりが今、目の前を歩いている。大柄と小柄コンビ。まるで私たちみたいで嬉(うれ)しい。

 「ハロー!」

 とあいさつすると、

 「コンニチハ!」

 日本語で返ってきた。

 彼女たちは日本語をとても上手に話す。日本にやってきて2年目。愛媛で英語の教師をしている。

 背の高い彼女はアイリーン・エリス。シカゴ出身の29歳。

 小柄でチャーミングな彼女はミシェル・トレーマー。ペンシルベニア州、同じ29歳だ。

 81番白峰寺(香川県坂出市)へ続く讃岐の遍路ころがしに、息が上がる。ふたりも、流れる汗を手拭(てぬぐ)いで押さえている。彼女たちは、休みの間だけ、区切り打ちをしている。しかも野宿だ。

 「野宿は怖くない?」

 「ノー、プロブレム! イツモヨクネムレマス。シコクハ、トテモビューティフル! ヒトモミンナ、シンセツデ、ヤサシイ」

 世界広しといえど、四国より安全で美しいところは、そうそうないようだ。

 ふたりが日本人と同じように礼儀正しいのに驚く。白峰寺に着いても、山門で深くおじぎをし、線香を立て、手を合わせる。ファッションも、白衣に手拭い、杖(つえ)を握る手にはお数珠が巻かれ、正統派遍路スタイルだ。

 なんと、独学で勉強したという般若心経まで、すらすらと声を上げて唱える。

 日本のお経に違和感はないのだろうか。尋ねてみると「スキダカラダイジョウブ!」と屈託ない。

 私の奉納演奏を聴いてもらう。日本の伝統や文化を勉強していたミシェルは、特に興味津々。生け花や茶道、陶芸、仏経……。それにお祭りが大好きらしい。

 「グッド!」

 彼女たちはスマイルで私の演奏をたたえてくれた。

 ふたりはリュックもビッグなアメリカサイズ。

 「何キロあるの?」

 「フタリアワセテ、25キロ、アリマス」

 ミシェルが10キロ、かたやアイリーンは、テントが入って、15キロあるというのだ。

 「オーマイゴッド!」

 美和さんがふたりの荷物を担いでフラついている。

 出会ったころ、ふたりは東京で暮らしていた。

 「なぜ四国に住んだの?」

 「遍路スルタメデス」

 四国を歩くことは「神様に感謝すること。歩かなければ本当の感謝にならない」と、アイリーンは言う。将来、女性遍路の国際サミットが開かれたら、どんなに楽しいだろう。

  
文=月岡祐紀子

  
写真=二木美和